法定後見と任意後見について

成年後見制度とは

精神上の障害により契約等の法律行為を適切に行うための判断能力が欠けていたり不十分な成年者に対し、家庭裁判所が選任する又は任意に後見契約を結んだ後見人が意思決定を代行する等支援して判断能力を補って本人の権利を守る制度です。

法定後見とは

精神上の障害により判断能力が十分ではない方を、裁判所の審判により保護・支援するために設けらせた制度です。
本人に契約締結能力がなくなってからでも利用できるところが、任意後見と大きく異なります。
申立権者による後見開始審判の申立てを受け、家庭裁判所は、後見開始の審判とともに本人のために成年後見人を選任します。
この成年後見人は、本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができます。本人が自らおこなった法律行為については、被後見人および成年後見人がこれを取り消すことができます。

任意後見とは

委任者が受任者に対し、精神上の障害により事理弁識能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その委託にかかる事務について代理権を付与し、任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる契約に基づくもの。
任意後見契約は事理弁識能力に問題がない時点において委任者本人が事理弁識能力が不十分になったとき以降の財産管理等のあり方を決定し、その決定に従って、実際に事理弁識能力が不十分となった後の財産管理等がなされるものであり、委任者本人の自己決定を高度に尊重する制度である。

制度の比較

①信頼できる後見人候補者の存在

任意後見制度は、本人の判断能力が十分である段階において、自らが信頼する者との間で任意後見契約を締結することで、将来に生じるかもしれない自らの判断能力減退時の財産管理や身上監護に備えるものです。後見人の人選を本人の意思に基づくことが出来ます。法定後見制度では、後見人の候補者を選定することは出来ますが、実際に後見人を決定するのは裁判所のため、必ずしも思っている人が後見人に選ばれるとは限りません。

②取消権付与の必要性

任意後見人は、法定後見と異なり、本人が第三者との間で締結した契約の取消権を付与されません。そのため、本人が何度も消費者被害等を受けている場合は、法定後見制度を選択することが望ましいと考えます。

③後見監督人の必要性

任意後見制度を利用する場合には、後見監督人の選任が契約発効の前提となるため、必然的に後見監督人が存在することになります。しかし、法定後見の場合は、後見監督人の選任は必須ではありません。

④死後事務委任の必要性

法定後見の場合、本人の死亡によって後見人の権限は消滅してしまい、死後の事務に関して非常に困難な問題が生じる場合があります。これに対して、任意後見制度を選択した場合、いわゆる死後事務委任の特約を付すことが可能となります。
委任の内容は、本人の死亡した後における残債務等の清算や葬儀・埋葬等の主宰などがあげられます。

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